100件中70件。2026年7月28日に発表されたAIO Trackerの調査で、ChatGPT・Geminiとの対話をきっかけに購買した事例のうち、7割で「AIに相談する前は購入候補ではなかった」商品・サービスが選ばれていたと報告されました。さらに42件では、AIから提案されるまで商品自体を知らなかったとされています。この記事では調査の中身と、数字を読むときの注意点、そして店舗・中小企業にとってどこで差がつくのかを解説します。
調査の概要:何をどう調べたのか
調査を発表したのは、AI検索での企業・ブランドの見え方を分析するツール「AIO Tracker」です。過去1年以内にChatGPTまたはGeminiとの対話を通じて商品購入・サービス申込に至った事例100件を集め、「AIから提案される前、その商品・サービスを知っていたか」を分類しました。調査時期は2026年7月です。
報告された分類では、100件のうち42件が「商品・サービス自体を知らなかった」、28件が「知っていたが購入候補ではなかった」、17件が「購入候補の一つだった」、13件が「購入するつもりで最終確認した」とされています。
前の2つを合わせた70件が、いわゆる「AI相談で候補入り」です。AIが、すでに知っている商品を調べる検索の代替ではなく、知らなかった選択肢と出会う場になっている——調査元はそう整理しています。
数字の内訳:70%の中身は2種類ある
70%というと大きな数字ですが、中身は性質の違う2つに分かれます。
①「そもそも知らなかった」42%
従来の検索では、ユーザーが商品名やジャンル名を自分で入力する必要がありました。生成AIでは「◯◯におすすめは?」「この条件に合うサービスは?」と尋ねた時点で、AI側から具体名が提示されます。指名されない限り露出ゼロだった無名の店・会社にも、提案枠に入る道があるということです。
②「知っていたが候補ではなかった」28%
こちらは見落とされがちですが、実務的にはむしろ重要です。認知は取れているのに選ばれていなかったブランドが、AIとの比較・相談の中で候補に浮上しています。つまりAIは新規認知だけでなく、比較検討の場面での「推され方」にも影響しているとみられます。競合と並べられたとき、AIが自社をどう説明するかが問われる部分です。
この数字を鵜呑みにしてはいけない理由
この調査の母集団は「AI経由で実際に購買した人」100件です。ChatGPT利用者全体のうち何%が購買に至るか、という数字ではありません。「AIに相談すれば7割が買う」と読むのは誤りです。
調査元自身も、一般ユーザー全体の割合を示すものではないと明記しています。件数も100件と多くはなく、業種の偏りも公開情報からは判断できません。したがってこの調査から言えるのは、規模の推定ではなく「AI経由の購買では、候補形成の段階からAIが関与しているケースが多い」という行動パターンの存在までです。
それでも無視できないのは、方向性が他の観測と一致しているからです。AI検索の利用は拡大傾向にあり、検索→比較→購入という従来の流れの外側で意思決定が進む場面は増えているとみられます。規模の推定はこの調査からはできなくても、型が変わり始めていることは押さえておくべきです。
店舗集客にとって何を意味するか
店舗・中小企業の目線で言えば、この調査がいちばん強く示しているのは、指名されなくても提案される余地がある一方で、提案されなかった店は比較の場にすら出ていないということです。「池袋 深夜までやってる整体」のような条件相談に対して、AIが挙げる候補は数店に絞られます。そこに入らなかった店は、検討されて負けたのではなく、検討の机に載っていません。気づかないうちに、本来なら来ていたはずの客が隣の店へ流れている状態です。
もう一つ見落とせないのは、AIに提案されたあとの動きです。提案を受けた人は、店名で検索し直し、地図と口コミで場所や評判を確かめるとみられます。AIでの見え方とGoogleマップでの見え方は別物ではなく、一続きの導線です。AIで候補に入っても、地図側の受け皿で離脱されれば来店にはつながりません。
店舗側の情報整備、どこで差がつくか
AIが自店を説明するときの材料は、一か所にまとまっていません。公式サイト、Googleビジネスプロフィール、口コミ、第三者の言及といったWeb上の複数の場所に散っていて、AIはそれらを組み合わせて「この店はどんな店か」を語ります。結果を分けるのは、手を入れる場所の数ではなく、どこから手を付け、どこまで踏み込むかの判断です。
書き足すほど輪郭がぼやけることがある
AIは、内容が具体的に書かれたページを引用しやすいとされています。どの店にも当てはまる文章しか置いていないサイトは、比較の土俵に上がれません。ただし、書けば書くほど良いわけでもありません。狙う検索語句と噛み合わない情報を足すと、店の輪郭がぼやけ、別の業種として扱われることがあります。どの語句に寄せるかで書くべき中身が変わり、ここに業種横断で通用する正解はありません。
要素は単独ではなく配分で効く
Googleビジネスプロフィールの各要素も、それぞれが単独で効くのではなく、組み合わせで効きます。競合が同じカテゴリで横並びになっている商圏では、何を前に立て、何を後ろに回すかで見え方が変わります。同じ整備をしても、隣に誰が並んでいるかで効き方が逆になることさえあります。整備そのものより、この配分の判断で差がつく部分です。
AIからの見え方は、店の中に記録が残らない
いちばん厄介なのは、AIが自店をどう説明しているかが、店の管理画面のどこにも残らないことです。AIの回答は、聞き方の言い回し、聞いた時点、聞いた人の地域によって入れ替わります。一度尋ねて自店が出たかどうかを見ても、それが偶然なのか傾向なのかは分かりません。複数の聞き方・複数の時点・複数の地点を並べて初めて形になる情報で、しかもその記録はGoogleビジネスプロフィールにも、サイトのアクセス解析にも一行も入ってきません。担当者の手間の問題ではなく、記録の取りようが最初から店の側にない、という構造です。
当社FACTORがこの判断を引き受けるとき、見ているのは店のプロフィールやサイトの中身だけではありません。同一商圏の競合がAIでどう説明されているかの並びと、聞き方・時点・地点を変えたときに候補がどう入れ替わるかまで並べたうえで、どこに手を入れるかを決めています。
自店の場合にどこから手を付けるべきかは、現在のプロフィールの状態と、狙う検索語句で競合がどう並んでいるかを見ないと決められません。無料のAI診断では、GoogleマップのURLを貼ると、いまの見え方の要点がその場で表示されます。
よくある質問
この調査は信頼できますか?
うちのような小さな店にもAI経由の客は来ますか?
AIに自社を推薦させる方法はありますか?
まとめ
AIO Trackerの調査は、生成AI経由の購買100件のうち70件で「AI相談を通じて候補入り」が起きていたと報告しています。母集団の性質上、規模を語る数字ではありませんが、候補形成の段階からAIが関与する購買行動が実在することは確かです。そしてAIの候補に入らなかった店は、比較の机にすら載らないまま客を逃しています。
どこに手を入れると効くかは、業種と商圏、狙う検索語句、そして隣に誰が並んでいるかで変わります。AIが自店をどう語っているかは、店の管理画面には記録されません。外から見たときの出方は店の中からは再現できないので、持っている側に出してもらうほうが早い、というのが実際のところです。
NEXT ACTION
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記事で挙げた観点が自店に当てはまるかは、実際の状態を見ないと判断できません。まず現状の把握から。
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