「構造化データを入れれば検索結果にリッチな表示が出る」。これはよくある誤解です。実際には、正しく実装してエラーもゼロなのに、検索結果の見た目が何ひとつ変わらないという状態がふつうに起こります。そして制作会社に聞くと「実装は問題ありません」と言われ、こちらは納得しないまま話が終わる。ここで食い違っているのは、構造化データが何をする仕組みなのかという理解そのものです。この記事では、入れても変化が出ないときに何が起きているのかを、仕組みの側から見ていきます。
構造化データは「表示を出す命令」ではない
まず前提から。構造化データは、ページに書かれている内容の意味を、機械が読み取れる形で添える注釈の仕組みです。この文字列は営業時間である、この数字は価格である、これは質問でこれが答えである、といった注釈にあたります。
注釈を添えることと、検索結果に特別な表示を出させることは、同じではありません。添えた情報をどう使うかを決めるのは検索エンジンの側で、実装した側が指定できるのは意味づけのところまでです。Googleも、仕様どおりに実装しても特別な表示が保証されるわけではないという立場を公開しています。
この前提が抜けていると、実装したのに何も起きないという現象が「失敗」に見えます。実際には失敗ではなく、仕組みとしてそういうものだ、という場面がかなりの割合を占めます。
では何のために入れるのか。意味があるのは、内容が誤解されずに伝わる状態を作っておくことのほうです。生成AIが答えを組み立てるときも、ページの記述を読んで解釈しています。人間が読めば分かる情報でも、どれが何なのかが曖昧なままだと、拾われ方が安定しません。効果を測りにくい代わりに、入れていないと取りこぼす側に回るという性質の施策です。
エラーがないことと、採用されることは別の話
検証ツールを通してエラーが出なかった、という報告はよく出てきます。ただし、この報告が保証しているのは書式が壊れていないことだけです。
実装が仕様に沿っていても、採用されないことがあります。ページに実際に表示されている内容と注釈の内容が食い違っている場合、注釈の側は無視されます。ここは仕様として明記されている部分です。また、サイト全体の評価や、そのページが検索結果に出る位置によっても、特別な表示が割り当てられるかどうかは変わります。
「エラーが出ていない」と「使われている」の間には距離があります。そして、使われていないことは画面上に何も表示されません。エラーなら警告が出ますが、無視された場合は何も起きないまま静かに終わります。制作会社の報告とこちらの実感が噛み合わない理由の多くが、この距離にあります。
もうひとつ、時間の問題があります。実装したページが再度読み取られ、評価が更新されるまでには間が空きます。入れた翌日に見て変化がないのは当然で、そこで判断すると早すぎます。かといって、どれだけ待てば結論を出せるのかは、サイトの規模や更新の頻度によって変わるため、一律には決められません。
変化が出ない状態には、性質の違う二種類がある
ここが実務でいちばん判断の要る場所です。
ひとつは、注釈は正しく読まれているが、検索側がそれを表示に使う判断をしていない状態。もうひとつは、そもそも読まれていない、あるいは読まれたが無視されている状態です。この二つは、外から見える症状がまったく同じで、しかも打つ手が正反対を向きます。前者は実装をどれだけ直しても動きません。後者は、直さない限り永久に動きません。
注釈が読み取られたかどうか自体は、管理画面の側でもある程度分かるとされています。ただ、読まれたのに使われていない理由は、自社の管理画面の外にしかありません。同じ検索語で並ぶ他社がどういう形で表示されているか、その並びが検索語や地点を変えたときにどう入れ替わるか。しかもこれは一度見れば済む話ではありません。特別な表示の出方は検索語ごとに違い、同じ検索語でも時期によって入れ替わります。一枚の画面を一度眺めても、どちらの状態にいるのかは決まらないということです。この比較は、自社のページをいくら見直しても出てきません。
放置したときに失われるのは、見た目の派手さではありません。効いているのか効いていないのか分からない状態のまま、次の判断が止まります。その間も検索結果の並びは動き続け、特別な表示で目に留まる他社のほうへ、本来なら自社に来ていた閲覧と問い合わせが流れていきます。止まっているのは自社だけで、取りこぼした客の数はどこにも記録されません。
自社のページが実際にどう扱われていて、同じ検索語で並ぶ他社とどこが違っているのかは、外から見た状態と合わせないと切り分けられません。店舗として地図にも出ている業態なら、GoogleマップのURLを貼ると、外からの見え方の要点がその場で表示されます。
踏むと戻せない線がある
構造化データは、間違った使い方をしたときの罰が重い領域です。変化が出ないことに焦って注釈を盛ると、効果どころか特別な表示の資格そのものを失います。重いものだけ挙げておきます。
- ページに表示されていない内容を、注釈にだけ書くこと:Googleの構造化データに関するガイドラインで明確に禁じられており、手動による対策の対象とされています。適用されるとリッチリザルトの対象から外れ、解除されるまで戻りません
- 存在しない口コミの件数や評価点を注釈すること:リッチリザルトの対象から外されるだけでなく、景品表示法上の問題にもなり得ます
このほかにも、どこまでが正当な意味づけでどこからが誇張なのかを分ける線は複数あります。どの線に当たるかは、扱う商材と業種ごとの広告規制によって変わり、一律では決まりません。表示を取りに行ったつもりの実装が、表示の資格を失う側に回ることがあります。
効いているかどうかを自社だけで判定しにくい理由
ここまでの話をまとめると、構造化データの成否は、自社の実装の正しさだけでは決まりません。検索側がそれを使う判断をするかどうかと、同じ検索語で並ぶ他社の状態が絡みます。
そして、判定に要る材料が手元に揃いません。検索結果の見え方は、検索する人の場所や端末、履歴によって変わります。社内の誰かが自分のパソコンで検索しても、それは実際の見込み客が見ている画面とは別物です。特別な表示が出る・出ないは検索語ごとに違い、同じ検索語でも時期によって入れ替わります。
切り分けに要るのは、一度きりの画面ではなく、地点と時点を並べた観測です。どの検索語で、どの場所から、いつ見たときに誰が特別な表示を取っていたか。その積み重ねがあって初めて、自社がどちらの状態にいるかが形になります。
そして、この観測は自社の管理画面には一行も残りません。Search Consoleで分かるのは自社のページの側のことで、同じ検索語で隣に誰がどう並んでいたか、それが地点や時点でどう入れ替わったかは記録されないからです。担当者の力量の話ではなく、記録の取りようが最初から無いという違いです。
つまり、効いていないように見えるとき、原因が自社側にあるのか検索側の判断にあるのかを切り分けるには、自社の外を並べて見るしかない、ということです。ここが分からないまま実装を直し続けると、動かないものを動かそうとしているあいだに、検索結果からの来訪は並びの上にいる他社へ流れ続けます。
※どこまで実装し、どの部分は効果が見込めないので優先しないかという設計は、当社FACTORが引き受けている領域です。この判断をするとき見ているのは自社のページだけではありません。同じ検索語で並ぶ他社がどういう形で表示されているか、その並びが検索語や地点を変えたときにどう入れ替わるか、生成AI側が同じ内容をどう読んでいるかまで揃えて逆算しています。この比較材料は、自社側の管理画面からは取得のしようがありません。
よくある質問
構造化データを入れると検索順位は上がりますか?
エラーが出ていないのに表示が変わりません。実装が間違っているのでしょうか?
どのくらい待てば効果を判断できますか?
まとめ
構造化データは、ページの内容の意味を機械に伝える注釈であって、特別な表示を出させる命令ではありません。だから正しく実装してエラーがゼロでも、見た目が変わらないことはふつうに起こります。しかも変化が出ない状態には、注釈は読まれているが表示に使われていない場合と、そもそも読まれていない場合があり、症状は同じなのに打つ手は正反対を向きます。読まれたのに使われていない理由は自社の管理画面にはなく、同じ検索語で並ぶ他社がどう表示されているかという外の情報に依存します。効いているか分からないまま実装を直し続けても、その間に検索結果の並びは動き、来訪と問い合わせは表示を取った他社へ流れます。地点と時点を変えたときの出方は、自社の中からは再現できません。並びを持っている側に出してもらうほうが早く、確実です。
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