92.8%。これは、ChatGPTで商品やサービスを比較した利用者のうち、外部サイトへの意味のあるクリックをしなかった割合です。2026年7月末に海外で公表された共同調査(Profound社・ケビン・インディグ氏ら)で報告された数字で、国内でもWeb担当者Forumなどが取り上げています。「AIで調べて、AIの回答の中で決めて、店に来る」——この流れが数字で裏づけられ始めました。店舗側の視点で、調査の中身と現実的な備えを整理します。
調査で何が分かったのか
調査は、56人の参加者がChatGPTを使って商品・サービスを比較する221件のタスクを画面録画で追い、AI回答でのブランドの露出データと突き合わせたものです。分かったことを要約すると次の2点です。
- 回答に登場する頻度が高いブランドほど選ばれていた。選ばれたブランドの平均表示頻度は24%、選ばれなかったブランドは11%で、全体で0.57の相関が確認されたと報告されています
- 参加者の88%は、そのカテゴリの事前知識が低い〜中程度だった。つまり、もともと知っている店やブランドを選び直したのではなく、AIの提示を見て候補を作っていた
注目したいのは2点目です。無名でも、回答の中で「〜向け」という明確な位置づけと納得感のある価格が示されると、最終候補に残る傾向が見られたとされています。知名度で勝てない中小店舗にとって、これは悪い話ではありません。
「回答内で完結」の中身
行動の内訳は、店舗運営者の想像より徹底しています。
| 行動 | 報告された数字 |
|---|---|
| 外部サイトへの意味のあるクリックなし | 92.8%のタスク |
| 外部サイトで価格を再確認した参加者 | ゼロ |
| 文章を読まず「拾い読み」した参加者 | 65.4% |
| 最も注目を集めた要素 | ブランド・製品の比較表(35.9%) |
公式サイトを見に来て、写真を眺めて、料金ページを確認して——という従来の検討行動が、この層ではほぼ起きていません。ChatGPTが作った比較表と「〜向け」ラベルが、実質的な検討の場になっています。調査はこれを、AI回答での見せられ方(フレーミング)が新しい「商品棚」になった、と表現しています。
「サイトに来ないなら、何をしても無駄では」と感じるかもしれませんが、そうではありません。AIが回答を作る材料は、Web上に公開された情報です。棚に並ぶかどうかは、情報を出す側の整備で変わります。
店舗にとっての意味|量は小さく、質は高い
「では検索対策をやめてAI対策に全振りすべきか」と言えば、それも違います。別の海外調査(97のB2Bサイト・約2,890万訪問の分析)では、AI経由と識別できたトラフィックは全体の0.5%程度にとどまっていました。流入の主役は依然としてGoogle検索です。
一方で同じ調査は、AI経由の訪問者が問い合わせなどに転換する率は他チャネルの約3倍(AI経由1.91%に対し検索経由0.58%)だったとも報告しています。AIとの対話の中で比較を終えた、目的意識の高い人だけが来ている、という解釈が示されています。
AI経由はまだ「量」のチャネルではない。ただし来る人の意欲は高く、回答内で候補が絞られる傾向は強まっている。Google検索・マップの運用を土台にしたまま、AIに正しく読まれる情報整備を足すという組み立てになります。どちらにどれだけ配分するかは、業種とAI利用が進んでいる客層かどうかで変わります。
棚に並ぶかどうかを分ける4つの論点
調査が挙げた「ブランド側が管理すべき要素」を、店舗向けに読み替えると次の4つになります。
1. 価格をどこまで開示するか
調査では、価格の間違いや欠落は候補からの除外につながるとされています。「料金はお問い合わせください」は、AIの比較表では空欄になり、比較の土俵から外れます。ここまでは事実です。
判断が要るのはその先で、どの価格を、どの粒度で出すかです。安い側を前に出せば比較表では有利に見えますが、来店後の落差が口コミに残ります。逆に本命の総額をそのまま置くと、価格帯で足切りされる商圏もあります。この線引きは、競合の価格帯と自店が狙う客層の重なり方で変わります。
2. 「誰向けの店か」を何と名乗るか
AIは「〜向け(Best for)」というラベルで店を分類します。自店の位置づけを自分で言語化していなければ、AI側が口コミや断片的な情報から勝手に決めます。
ここで難しいのは、名乗る言葉の選び方です。範囲を広く取ると誰の候補にも入らず、狭く絞ると母数が消える。しかも狙う検索語句と噛み合っていないラベルを名乗ると、Googleマップ側の見え方とAI側の見え方がずれます。ラベルは1つ決めれば終わりではなく、競合が同じ言葉を使い始めた時点で差別化の意味を失います。
3. 比較されやすい形式になっているか
営業時間・定休日・支払い方法・駐車場・予約可否といった基本項目が、機械に読み取れる形になっているか。FAQページや構造化データ(スキーマ)の整備も、この文脈で効いてきます。
ただし、項目を増やせば増やすほど良いわけではありません。判断に関わらない情報が増えると、店の輪郭がぼやけ、別の分類として扱われることがあります。
4. 「デメリット」がどう扱われているか
回答内でネガティブな一言が付くと致命的になり得る、と調査は指摘しています。厄介なのは、この一言が自店の管理外にある情報から生まれることです。古い口コミ、他サイトに残った過去の情報、放置された低評価。どこから拾われているかを特定できないと、直しようがありません。
4つを並べると単純に見えますが、難しいのは作業ではなく判断のほうです。どの言葉で「〜向け」を名乗るか、価格をどこまで開示するか、AIの紹介文が変わったときに何を直すか。しかもこの判断は固定ではなく、競合が動けば適解も動きます。答え合わせをしないまま続けても精度は上がりません。※当社FACTORは、この「AIにどう紹介されているかの定点確認」と、そこから逆算した情報整備を、設計から運用ごと引き受けています。狙うキーワードの決定、カテゴリ・属性・説明文・写真をどの順番で整えるかの設計、月次での打ち手の入れ替えまでが範囲です。
自店がいまAIにどう紹介され、どこが弱点として扱われているかは、実際に確認しないと分かりません。無料のAI診断で現状の見え方を確かめるところが出発点になります。
この調査をうのみにしない読み方
最後に、数字の限界も正直に書いておきます。
- 参加者の93%が週1回以上AIを使う熟練ユーザーで、一般消費者の平均像とは言えません
- 示されたのは相関関係であり、因果の証明ではないと調査自身が断っています
- 調査対象は海外の商品・サービス比較で、日本のローカルな店探しでも同じ行動になるかは未検証です。国内では、AIに推薦された後に店名でGoogle検索し直す行動も報じられており、マップと口コミが最終確認の場になる構図は当面続くとみられます
「AIで検索が終わった」と煽る話でも、「まだ関係ない」と切り捨てる話でもなく、検討の入り口が一つ増えたという理解が実態に近いはずです。
よくある質問
ChatGPTに自店を推薦してもらう方法はありますか?
AI経由の来店は実際に増えているのですか?
この調査結果は日本の店舗にもそのまま当てはまりますか?
まとめ
ChatGPTの回答内で購買判断が完結する傾向が、具体的な数字で報告され始めました。露出頻度が候補入りを左右し、価格の欠落やネガティブな一言が除外につながる——この構造は、店舗がWebに出す情報の精度がそのまま「棚に並ぶかどうか」を決めることを意味します。論点は奇策ではなく、価格の開示範囲、対象客層の名乗り方、基本情報の構造化、紹介のされ方の定点確認の4つです。ただし、どこまで開示し、何と名乗り、どれを定点で追うかは、競合の並びと狙う客層によって答えが変わります。Google検索とマップの土台の上に何を足すべきかは、自店がいまどう紹介されているかを確かめてからでないと決められません。
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