グルメサイトと自社予約の役割分担は、手数料の総額を追っている限り、答えが見えてきません。総額だけを見て媒体を減らした店が、翌月に予約数を落とすことがあるのも、その数字からは理由が読めないからです。逆に、全部を媒体に任せたまま席が埋まっている店でも、本来なら費用のかからない経路で入るはずだった予約が媒体を通っている場合があります。同じ「予約が入っている」状態でも、中身はまったく別物です。どこで判断が割れ、なぜ店の中からはそれが見えにくいのかを整理します。
予約の入口は一種類ではない
「予約経由の来店」とひとまとめに数えている店は多いのですが、そこに含まれている人の状態は大きく分かれます。
ひとつは、店をまだ決めていない人です。エリアと人数と日付から候補を絞り、写真と価格帯とレビューを見比べて選ぶ。この段階の人にとって、比較しやすい場所に情報が並んでいることには意味があります。
もう一方の端にいるのが、店をすでに決めている人です。人から聞いた人も、以前に来たことがある人も含まれます。この人が起こす行動は比較ではなく店名の入力で、探しているのは予約の受け口です。しかも再訪の人は前回の経路をなぞりやすく、初回の入口が、そのままその人の恒久的な入口になりやすいという性質があります。
ところが予約台帳に残るのは合計の数字で、その数字からは中身が読めません。
指名で来た人が媒体を通ると、何が起きているのか
店名で検索した人が、検索結果に並んだ媒体のページを開き、そこから予約を入れる。この流れ自体はごく自然に起きます。利用者からすれば、予約の入り口として使い慣れた画面がそこにあるからです。
店側から見ると、この予約は「比較の末に選ばれた新規」ではありません。すでに来る気で店名を打った人です。それでも、経路としては媒体を通っています。つまり、集客の対価としての手数料が、集客を必要としなかった客にも乗る構造になります。
再訪の人も同じ経路をなぞるため、この構造は一度できると固定化しやすくなります。常連が増えるほど媒体経由の予約数も増え、数字だけを見ると媒体が好調に見える、という状態になり得ます。
媒体経由の予約数が増えていること自体は、媒体が新規を連れてきている証拠にはなりません。指名客と再訪客が同じ経路に流れ込んでいる可能性が混ざっています。
では媒体を切ればよいのか、という話にならない理由
ここまで読むと、指名客の経路だけ自社に寄せればよいように見えます。ただ実務では、そう単純に切り分けられません。
まず、店名で検索した人に対して自社の受け口が上に出るとは限りません。媒体のページの方が検索結果で目立つ位置にある業種・エリアは珍しくなく、その状態では利用者は自然と媒体を通ります。受け口を作っただけでは経路は変わらず、見つけられる位置に置けているかが別の論点として残ります。
加えて、媒体を減らすと比較段階の露出も同時に減ります。媒体側に蓄積されたレビューや掲載の実績も、それ自体が資産として働いており、掲載をやめた瞬間に使えなくなります。切り方を誤ると、費用は減ったが予約総数も減った、という結果になります。どちらか一方に寄せるという発想ではなく、経路ごとに役割を割り当てるという考え方が要ります。
答えが反転する条件はどこにあるか
相談を受けていて感じるのは、この判断が店ごとに驚くほど違うということです。同じ商圏の同じ業態でも、逆の結論が正しいことがあります。
たとえば、空席の多い時間帯を抱えている店と、通年で満席に近い店では、新規を連れてくる経路に払う対価の意味が違います。前者にとって媒体は空席を埋める手段ですが、後者にとっては、埋まる席の予約を有償の経路に置き換えているだけになりかねません。店の名前がどこまで知られているかによっても、指名で入ってくる人の比率は変わります。
これらの材料は互いに逆を指すことがあります。空席は埋めたいが単価は落としたくない、指名は増やしたいが新規の露出は減らしたくない。どれを優先するかで、役割分担の結論は反転します。そして自店がどの位置にいるかは、自社の予約台帳を縦に読むだけでは判断がつかず、同じ商圏の他店がいまどう見えているかと突き合わせて初めて見えてくる部分があります。いま自店がマップ上でどう見えているかは、無料診断で確かめられます。GoogleマップのURLを貼ると、要点がその場で表示されます。
当社FACTORがこの設計を引き受けるとき、見ているのは自店の予約構成だけではありません。同一商圏の競合が店名検索でどう表示されているか、媒体のページと自社の受け口のどちらが上に出ているか、その並びが月ごとにどう入れ替わっているか。この並びは検索する地点や時点、検索の言い回しによっても入れ替わります。そして競合側のこうした推移は、自店の管理画面にも予約システムにも一行も残りません。記録の取りようが最初から店の内側にない、という構造です。
電話しか受け口がない時間帯の話
役割分担を考えるうえで、見落とされやすい経路がもうひとつあります。営業中の電話です。
飲食店の場合、ピーク帯は電話に出られないか、出ても長く話せません。ところが利用者が予約を思い立つ時間帯は、まさにその夕方から夜に寄ります。つながらなかった人はかけ直すこともありますが、多くはその場で別の店に移ります。
問題は、この取りこぼしが記録に残らないことです。着信履歴が残っていても、それが予約の意思だったかは分かりません。店側の実感としては「今日は電話が少なかった」で終わります。
受け口を24時間開けておくこと自体は、媒体でも自社の仕組みでも実現できます。ここで判断が必要になるのは、どの経路をその受け口にするか、そして店名で探した人がその受け口にたどり着けるかどうかです。後者は予約システムの選択ではなく、検索とマップ上での見え方の問題になります。
見直さないまま続けた店に起きること
予約導線の設計は、緊急性が低い課題です。席が埋まっているうちは、経路の内訳を気にする理由がありません。だから多くの店で後回しになります。
効いてくるのは条件が変わったときです。たとえば近隣に競合が開業したとき、指名で入る経路を持っていない店は、露出の増減がそのまま予約数の増減になります。自分で動かせる部分がない状態で外部の条件変化を受けることになり、打てる手が値引きや掲載プランの引き上げに限られていきます。
もうひとつは、静かに続く取りこぼしです。店名で探した人が受け口を見つけられなかった分、電話がつながらずに離れた分。どちらも数字には残りません。日々の欠損が小さいために気づけず、気づいたときには「なぜか新規が減った」という形でしか現れない——これがこの領域で最も見えにくい損失です。
よくある質問
グルメサイトはやめて、自社予約に一本化したほうが利益は残りますか?
媒体経由の予約が増えているのは、媒体が効いている証拠ではないのですか?
店名で検索した人を自社の予約ページに誘導するには、ページを作れば十分ですか?
繁忙時間帯に電話が取れません。予約の取りこぼしはどのくらいありますか?
まとめ
グルメサイトと自社予約の役割分担は、手数料の総額を追っている限り見えてきません。予約の入口には、まだ店を決めていない人と、すでに店を決めている人が混ざっていて、それぞれ払うべき対価の意味が違います。とはいえ媒体を絞れば比較段階の露出も同時に減ります。どちらに寄せるかは店ごとの条件で反転し、その条件の一部は、検索する地点や時点、言い回しで入れ替わる並びという、店の外にあります。繁忙時間帯の取りこぼしも含め、これらは予約台帳には残りません。外から見たときの出方は店の中からは再現できないので、持っている側に出してもらうほうが早いはずです。
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