英語で自館の名前を検索したとき、Googleの画面に何が出るか。実際に見たことはありますか。日本語では隙なく整っているのに、表示言語を切り替えた途端に画面が薄くなる。そんな宿が珍しくありません。訪日客のなかには、予約サイトで宿を見つけたあと、Googleで宿名を検索し直して裏を取る人がいます。そこで見える画面が、そのまま比較の材料になります。この記事では、旅館・小規模宿がGoogleビジネスプロフィールの多言語まわりで押さえるべき論点を並べます。
英語の画面で、自館はどう見えているか
日本語で自館を検索したときに見える画面と、訪日客が見ている画面は同じではありません。Googleは利用者の言語設定に合わせて表示を組み替えるため、日本語では整っている宿でも、外国語の画面では説明が途切れ、写真から読み取れる情報が減り、口コミとのやりとりが一方通行に見えることがあります。
厄介なのは、その差がどこで生まれているかが宿ごとに違うことです。ある宿では文章の抜けが響き、別の宿では写真の中身が響く。同じ「英語の画面が弱い」という症状でも根が逆を向いていることがあり、取り違えると手間だけがかかって見え方は変わりません。
訪日客の動線を追うと、これはかなり不利に働きます。予約サイトで候補を見つけたあと、決める前にGoogleで宿名を検索する人がいるからです。写真、口コミの中身、場所、そして「この宿は外国語の客を受け入れているのか」という空気。その確認の場が、いまの画面です。
訪日客にとって、Googleの画面は予約サイトの情報を検算する場所です。ここで不安が残ると、候補リストから静かに外れます。外れた予約は数字に出ないので、外れたこと自体に気づけません。客単価の高い旅館では、わずかな取りこぼしでも売上への響き方は小さくなく、外れた客は、同じ画面で不安を感じなかった近隣の宿に流れています。
翻訳が効く場所と、効かない場所がある
Googleビジネスプロフィールの多言語まわりは、「全部が自動で翻訳される」でも「まったく翻訳されない」でもありません。項目の性質によって扱いが分かれます。
大きな線は一本です。Googleが構造として持っている情報は言語をまたぐが、こちらが自由に書いた文章と画像は、書いた言語のまま届くことがある。カテゴリや営業時間のような定型の項目はGoogle側が言語ごとの表記を持っていますが、宿が自分の言葉で書いた文章や、写真に写り込んだ文字は事情が違います。口コミの本文のように機械翻訳が添えられて読まれるものもあり、どこに翻訳が挟まりどこに挟まらないかは、端末や表示する画面によっても揺れるとされています。
この線があるため、外国語の画面で何が起きているかは、日本語の管理画面からは見えません。管理画面に並ぶのは宿が入力した内容だけで、それが英語や中国語の利用者の画面でどう組み替わって出ているかは、一行も記録されないからです。
そして、どの情報を何語で持つかは、宿によって答えが変わります。客層、館内の体制、公式サイトの状態と、判断の材料は複数あり、互いに逆を指すことがあります。ここを踏まえずに手当たり次第に英語化すると、日本語の利用者に対する見え方のほうが崩れます。自館がどこから手を付けるべきかは、現状と競合館の並びを見ないと決められません。無料のクイック診断では、GoogleマップのURLを貼ると要点がその場で表示されます。
外国語の口コミに、何語で返すか
相談の多い論点です。英語で書かれた口コミに、英語で返すのか、日本語で返すのか。一律の正解はありません。
判断が割れる根は、返信を誰に読ませるかにあります。投稿者本人への応答として書くのか、これから宿を選ぶ将来の閲覧者に向けて書くのか。この二つは書く中身も言語の選び方も逆を向くことがあり、どちらに寄せるかは宿の客層と、口コミ欄が比較の場としてどう読まれているかで変わります。加えて、外国語で書いた設備や対応の説明は、館としての約束として読まれます。
機械翻訳の結果を確認せずに貼ると、敬語や謝罪のニュアンスが崩れます。とくに苦情への返信では、意図しない責任の認め方になったり、逆に突き放した印象になったりします。翻訳の結果を読める人が館内または委託先にいるかどうかで、取れる方針は変わります。
返信の言語方針は、一度決めると口コミが増えるたびに効いてくる部分です。方針が定まらないまま個別に対応していると、数が増えたときに過去の返信と矛盾します。
※当社FACTORが多言語の口コミ返信を設計から引き受けるとき、見ているのは自館の口コミ欄だけではありません。同じエリアで比べられる他館が、どの言語の口コミにどう応じているか。表示言語や検索する地点を変えたとき、検索結果の並びと各館の見え方がどう入れ替わるか。その並びの中で自館の返信がどう読まれるかを並べて、方針を決めています。こうした比較は、自館の管理画面には一行も残りません。記録されるのは自館に付いた口コミと自館の返信だけで、他館との並びや言語ごとの出方は、外から並べて取らない限り記録の取りようが最初からないためです。
OTAと直接予約は取り合いではない
「OTA依存から抜けたい」という相談は、旅館・小規模宿でとくによく聞きます。ただ、OTAを削って直接予約に振り替える、という構図で考えると、たいてい行き詰まります。
訪日客の探し方のひとつを追うと、両者が同じ導線の上に並んでいることが分かります。予約サイトや旅行系メディアで宿を見つけ、Googleで宿名を検索して写真と口コミを確かめ、公式サイトで条件と空室を見てから、予約サイトに戻るか公式で予約するかを決める。途中で得られる情報が薄いと、人は情報量の多いほうへ戻りやすくなります。
つまり直接予約の比率は、公式サイトの出来だけでは動きません。Google上の見え方とマップ上での順位が、そのまま直接予約の下地になります。OTAでの露出も、マップでの順位も、公式サイトの整備も、どれかを止めて別のものに回すのではなく、同時に積み上げていく関係にあります。
とはいえ、この並行運用が人手の限られる小規模宿ではいちばんの負荷になります。繁忙期に手が止まり、閑散期にまとめて直そうとして、そのころには口コミが積み上がっている。その間も、宿名を検索して画面の薄さに引っかかった訪日客は、手数料のかかる予約サイト経由で入ってくるか、近隣の宿に流れています。
写真・館内表記・チェックイン導線
言語の設定から少し離れて、画面の外で効く要素もあります。訪日客が不安に思うのは、たいてい着いてから先のことです。
写真
外観や部屋、風呂、食事の写真は多くの宿が持っています。差がつくのはその先で、文化の違う客が「着いてから困らないか」を写真から読み取れるかどうかです。何が足りないかは、宿の作りと、同じエリアで並ぶ他館が何を見せているかで変わります。
館内表記
写真に写り込んだ日本語は翻訳されません。館内の掲示をそのまま撮った写真は、外国語の利用者にとって情報量が大きく減ります。表記そのものを多言語化するのか、写真の選び方でしのぐのか、キャプションで補うのか。宿の作りと予算で答えが変わる部分です。
チェックイン導線
旅館は宿泊業のなかでも到着時刻や食事の時間といった制約が多く、ここが伝わっていないと当日のトラブルになります。トラブルは口コミに書かれ、その口コミを次の客が読みます。運用の不備が、そのまま集客の数字に返ってくる構造です。
自館の弱点は、館の中からは見えにくい
多言語まわりで差がつく場所は、文章・写真・導線にまたがり、幅があります。ただ、実際に効くのは自館の弱いところに限られます。そして、どこが弱点でどこは触らなくていいのかは、項目を一つずつ埋めていっても分かりません。
弱点かどうかは、同じエリアで比べられる他館との相対で決まるからです。自館の外国語の説明が短くても、周りの館がさらに薄ければ大きな差にはなりません。逆に、自館なりに整えたつもりでも、隣に並ぶ館が外国語の画面を作り込んでいれば、比較の場で見劣りします。同じ状態でも、周りの並び次第で打ち手が逆を向くのはこのためです。
この比較の材料は、館の中にはありません。外国語の画面での並びは、表示言語・検索する地点・検索の言い回しを変えて並べてみて初めて形になるもので、管理画面にもアクセス解析にも残らないからです。担当者の努力で埋まる差ではなく、材料の取りようの差です。自館がどの位置にいるかは、無料のクイック診断で外からの見え方の要点を出してもらうほうが早く、GoogleマップのURLを貼ると要点がその場で表示されます。
よくある質問
Googleビジネスプロフィールの説明文は、英語でも書けますか?
外国語の口コミには、必ず同じ言語で返信すべきですか?
写真に写った日本語の館内表示は、外国語の利用者にも読めますか?
OTAを減らせば直接予約は増えますか?
まとめ
訪日客のなかには、予約サイトで見つけた宿をGoogleで検算してから予約先を決める人がいます。定型の項目は利用者の言語で表示されても、宿が自分で書いた文章や写真に写り込んだ文字は書いた言語のまま届くことがあり、日本語の画面は隙がないのに外国語の画面では薄く見える、という状態が生まれます。返信の言語にも、OTAと直接予約の関係にも、一律の正解はありません。
そのうえで、自館のどこが弱点かは館の中からは判別できません。外国語の画面での出方は、表示言語や検索する地点を変えて他館と並べたときに初めて見えるもので、自館の管理画面からは再現する手段がないからです。外から見たときの出方は、それを持っている側に出してもらうほうが早い。その間にも、外国語の画面で迷った客は近隣の宿か、手数料のかかる予約サイトに流れています。
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